イルマリ・タピオヴァーラのピルッカスツール(75)
数年前までは、ヴィンテージの味わいがある椅子を、ただのボロい椅子としか見ていなかった僕が、今では至極のアートピースとして賞賛しているのだから不思議なものだ。
そんな僕のコレクションの中でも一番ボロい?のが、この50年代のピルッカスツール。
塗装もリペアされておらず、レグのはめ込みの修正も一切行っていない。
だから、座れば軋むし、万が一勢い良く腰掛けでもしたら、緩んだレグに圧力が掛かって折れかねない。
また、曲線を構成する集成部分のひび割れもなかなかのものだ。
それでもひとたび部屋に置き、本でも重ねてみれば、突如として爆発的なオーラを発してくる。
もちろん、置く場所やコーディネイトの仕方次第では、ただのボロい椅子にしかならないかもしれない。
しかし、その使い方次第では、どんな椅子にも負けない美しさがあるのもまた事実だ。
それは歴史が刻まれたが故に発する、ヴィンテージならではの奥行き感のある美しさなのだろう。
最近ではカントリー風やアールヌーヴォー風や北欧風など、数多くの「風」が出回っている。
確かにそれらは一見、それっぽく見えるのだが、そこには奥行きが無く、薄っぺらいのだ。
「風」は言い換えれば「かぜ」でしかなく、ふわっとその瞬間を流れ行くだけで、このピルッカスツールのように時代が変わっても、一切場所を変えずに鎮座できるだけの重量感と安定感がないのだ。
もちろん、「風」が全て駄目だと言っているわけではない。時と場合によっては、ありだとは思う。
しかし、この圧倒的な重量感を前にしたとき、それらはやはり「風」でしかないのだな、と頷かざるをえないのだ。
これこそがきっと歴史が織りなす重み(伝統)なのだろう。
それだけに、このピルッカスツールを眺めていると、僕らは決して現在(現代)だけを生きてはいないのだなぁと痛感させられるのかもしれない。
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