イルマリ・タピオヴァーラのドムスチェア(51)
2年ほど、探していたヴィンテージの椅子がある。その椅子は10年ほど前まではさほど入手が難しいものではなかったらしい。
しかし、北欧ブームや、世界的なヴィンテージ人気によって数は激減し、そのときには既に希少な椅子となっていたのだ。
またヴィンテージは状態も様々だ。当然、わざわざ長い間探しているのだから、状態の良い物が欲しい、そう思うと尚更出てこなければ値段も張る。
しかし、この探している間というのも、実は結構、僕は好きだったりする。
恋愛に発展する寸前のわくわく感とでも言えばよいのか、そんなときめきを覚えるのだ。
そしてそれが見つかったという一報を聞いたときは、これまた恋愛に喩えるなら、告白してOKが出た時の、あの瞬間と似た感動がある。
そして、このイルマリ・タピオヴァーラのドムスチェアこそ、その探し求めていた椅子だ。
アルヴァ・アアルトと並び、フィンランドの巨匠であるイルマリ・タピオヴァーラ。
その彼がイタリアにあるドムスアカデミーというデザイン学校のために設計したこの椅子は、長時間の使用に耐えうる強度と、体勢を色々と変えたとしても、どの角度でも違和感なく使用できる多様性を兼ね揃えている。
またヴィンテージのドムスチェアは、小さく遠慮がちに張り出したアームと、座面下に穴が開いており、そこに棒を通し、隣の椅子と連結できたりもする。
これも教室に多くの椅子が並んだときに整然とし、美しく見えるという彼なりの配慮だ。
アアルトが大局的でシンプルなデザインであるのに対し、イルマリは、そういう細やかな気遣いやディティールの詰め方が非常に上手いデザイナーなのだ。
それは時に女性的で、時に力強い男性と、その作品によって、様々な表情をみせてくれる。
そんな彼の作品の中でも、このドムスチェアはやはり男らしさだろうか。
ただその中にもイルマリ独自の繊細さが詰まっていて、見る所によっては女性らしさもあったりする。
このように多様性と多面性を持ち合わせた椅子は、数多い名作椅子の中でも、稀な存在だ。(それだけに僕のコレクター心をくすぐってしまうわけだが)
さらにこのドムスチェア、デッドストックとまでは言わないが、非常に状態がいい。これ、業界用語では、「育ちが良い」というのだが、これも良いヴィンテージの必至条件。
こういう育ちの良い名作椅子は、年月が経っても、決して価値が下がらないのだ。それだけにインテリアとして消費するだけではなく、現物資産という投資要素もあったりする。
そんな育ちの良い椅子はなかなか巡り会うものではないけれど、そういう出会いを強く求めていれば、いつかはきっと出会えるものだ。
それはまるで最高の伴侶との出会いのように・・・・・・なんてたまにはそんな気障なことを言って締めくくりたいと思う。
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